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バージャー病の概論

筑波大学臨床医学系外科教授 榊原謙(ゆずる)

バージャー病の概論

Buergre病は、1908年にフランスのLeoBuergerが四肢末梢動脈の炎症閉塞疾患を病理学的に研究し、これをAmgrican. Jornal ofMedical Sience誌に論文として報告したことから世界に認識されるようになった。この疾患は、いくつかの異なった病名を持つが、混乱を招かないようにまずその整理をしてみよう。

  1. 「閉塞性血栓性血管炎」:血管に炎症(たとえば、風邪をひいたときに喉が赤く腫れて熱を持って痛むといった状態)が起こって、その炎症の影響で血管の中を流れている血液が凝固して血管を塞いでしまう。
  2. 「Thromboangitiso bliiterans」:TAOはこの閉塞性血栓性血管炎をただ欧文表記したり、その頭文字を省略記号として使いやすくしたものがある。
  3. Buergersdsease:これは当然この病気の発見者Buerger氏にちなんで命名されたものである。「Buergre」をフランス語で発音すると「ビュルガー」、英語で発音すると、「バージャー」となるために、この病気に多くの名前が存在するかのような印象が持たれている、このようにそれぞれの観点から、同じ病気でありながら複数の異なった呼び名が使われてきたために混乱が生じてきたことも事実であろう。

では、「何で血管に炎症がおこるのかと?」、これが皆様の当然の疑問であろう。またこの疑問にはっきりとした科学的な回答が得られれば、最も合理的な治療と予防を行うことができるはずである。世界中の多くの研究者がこの答えを追い求めているが、残念ながら現在のところこの病気の原因は究明できていない。したがって、難病指定されているのが現状である。ただ、この疾患には多くの特徴があり原因究明に多くのヒントを与えていると考える:(1)中近東・アジア地域に多く、欧米などの有病率は低い。(2) 比較的若い(20から40代) 男性に多い。(3) 喫煙習慣と発病に密接な関係がある。何が真の原因で、何が増幅因子なのかなと既成概念にとらわれることなく検討し直す必要もあるかと考えている。

また最近では、Buerger病と必ずしも区別のつきにくい類縁疾患群と考えられる血管炎に遭遇することも少なくない。女性もしくは喫煙縦貫を持たない若年男性で、膠原病の診断基準を満たさず、末端に有痛性潰瘍で発症しわれわれのところを訪れる患者さんたちである、遊走性静脈炎もなく、血管造影で典型的なBuerger病に類似している。このような疾患群の原因究明からBuerger病の解明に糸口ができるかもしれないが、このように酷以する疾患群が潜在するためにBuerger病の正確な有病率の把握などに困難が生じているのも事実と思われる。

日本ではタバコの販売量そのものに激減の傾向はないものの、昨今の若年層の喫煙率低下の世相はBuergre病発生率の低下に一役買っていると考えられる。私が研修医であった20数年前と比べると、現在Buergre病の患者さんは明らかに少なくなっていると考えられる。

インターネットなど情報入手がしやすい環境が整ったため、比較的若い患者さんは専門医のいる医療機関に集中する傾向にあると考えるが、血管疾患専門医の間でもBuergre病の発病率の低下は共通認識となっている。一方、血管拡張薬・血小版凝集抑制薬などの内服薬が比較的容易に使えるようになってきたため、末梢血行障害がありそうな患者さんに対して開業医でこれらの薬が早期から処方されるために、Buerger病の患者さんが専門医まで来る必要がなくなったとの見方をする人もいる。

本書の読者に、この病気の症状についてはあえて語り直すことは不必要であろうし、後述される項目にも多くの情報が盛り込まれるであろう。「禁煙」・「禁煙」・「禁煙」、これが治療のキーワードである。禁煙できていないのに内服薬を多数飲んだり、神経ブロック・バイパス手術を受けたり、まして遺伝子治療や細胞移植療法を受けたりしょうと思っておられる方がいるとすればこれほどナンセンスな話はないと思う。Buerger病の概説の項目を書かせていただくにあたって、本書は患者さんの目線でできあがるべきと考えていたが、いざ書き出してみればやはり日頃の医師の目線で文章ができあがってしまう。多くの患者さんと接してきて、やはり自己管理とくに禁煙ができるかどうかでその患者さんの人生が大きく変わっていくのを実感している。もしまだできていない方がいれば、是非申し上げたい。「禁煙してください!!!!」