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バージャー病の外科治療のポイント

筑波大学臨床医学系外科講師 佐藤藤夫 (文献)

バージャー病に対する外科的治療は、交感神経節切除術と血行再建術に大きく分かれる。対象となる症例は、内科的治療を行っても症状の改善が認められず、特に潰瘍・壊死などが存在する場合である。近年、早期の禁煙を含む生活指導と血管拡張薬などの各種の薬剤による治療の進歩により、外科的治療の対象となる症例は減少しており、また外科治療は難治性の症例が対象となる傾向にある。また、活動範囲が広い若年症例で中枢側の病変が強い場合には、間歇性破行の病状を改善させるために血行再建術も選択される。

1. 交感神経節切除術

交感神経に刺激が加わると動脈は収縮する。交感神経節を切除することにより動脈が収縮するという反応がなくなり、手足の血流を増加させるのを目的とする。上肢は血管の本幹がつまっていても周囲の細かい動脈の発達 (側副血行) が豊富であり、潰瘍や壊死の進行を認めることが下肢に比べて少なく、また病変の場所が手指末梢に存在することが多いため、血行再建術の適応となる症例は少ない。したがって、上肢に病変がある多くの症例では、血行再建術よりも胸部交換神経節切除術が行われてきた。ただ、従来の手術は傷も大きく開胸を要するため、傷を小さくし手術による体への影響 (手術侵襲) を少なくすることを目的とし、最近では胸腔鏡を用いた内視鏡下手術が行われている。当院でも呼吸器外科との連携により、胸部に5~10mmのポート (創) を2~3ヶ所開けるだけの内視鏡下胸部交換神経節切除術を行っている。なお、この治療の主な合併症として、気胸・血胸・ホルネル症候群があるが、いずれもその発生頻度は低く安全性は高い。交感神経節を切除した支配領域の発汗が停止するのも重要である。

下肢の病変に対して、従来は第2~4腰部交換神経節切除術が行われてきた。近年では、手術侵襲を少なくするために、交感神経節に対するブロックが一般的に行われるようになり、切除術を選択する頻度は減少した。試験的に留置した硬膜外カテーテルからの薬剤の持続投与や、一時的な交感神経節ブロックによる診断的治療を行い、その効果を認めれば恒久的な神経ブロックを行う。

2.血行再建術

血行再建術の適応となる症例は、重症虚血肢病変に対するlimb salvage (救肢) が目的となることが多く、内科的治療では十分な効果が得られない場合、安静時の痛みと潰瘍形成・壊死を伴う場合が多い。バージャー病は四肢末梢に病変を認めることが多く、下肢では血管が開存している部位が膝窩動脈よりさらに末梢にあることが多い。また、飛び石状に病変が認められることも多いので、バルーンカテーテルなどを用いた経皮的血管形成術による血管拡張の適応症例が少なく、バスパス術も手技的に困難な場合も少なくない。

バイパス術は末梢側の細い動脈への吻合となるため、原則的には自家静脈をグラフトとして用いることが多い。しかしながら、遊走性静脈炎の合併が20%程度に認められるため、静脈がグラフトとして適当ではない場合もありその選択には注意を要する。また、末梢の病変のため、バイパスの距離が長くなりがちで、下肢の小伏在静脈・大腿深静脈、上肢の尺側皮静脈・橈側皮静脈などをつなぎ合わせて用いることが必要となることもある。静脈グラフトに適切な長さが得られない場合には、人工血管の使用を余儀なくされる場合もある。本幹にバイパスをつなぐところがない場合は、側副血行の細い血管に対するバイパスも行われる、また、バイパスの長期開存率を上げるために、エスマルヒ駆血帯を用いて血流を止めて血管をつなぐことによりもともとの血管の損傷を少なくしたり!)、バイパス流量を増加させてその開存を良くする目的から動静脈瘻を併設する場合もある。バイパス5年間の開存率は、禁煙例70%に対して喫煙再開例30%と術後の喫煙によりグラフト開存率の著明な低下を認めるため、術後の禁煙指導はきわめて大切であるという報告もある。

1. 患肢切断

各種の治療が無効で、病変部位の壊死や感染創の進行が認められた場合には、やむなく指趾や四肢の切断を要する、近年では、各種の治療法が無効な症例に対して患肢の切断の前に、遺伝子治療や骨髄細胞移植治療などの血管新生療法が試されるようになってきている。これについては、後述される項にその内容が書かれる。

参考 文献

  1. Bernhard VM, Boreen CH, Towne jB Pneumatic tourniquet as a substitute for vascular clamps in distal bypass surgery. Surgery. 1980 ; 87:709-13.
  2. Sasajima T, Kubo Y, lnaba M, et al. Role of infrainal bypasss in Buerger' s Disese An eighteen-year experiencee Eur j Vasc Endovas Sur j Vasc Endovas Surg. 1997; 13: 186-192.