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バージャー病の看護のポイント

順天堂大学医学部附属病院順天堂医院看護部 戸島郁子 橘優子 (文献)

「バージャー病」は、動脈の内側が何らかの影響で炎症を起こすことにより、そこに血液の固まりができて、血管が細くなり、その先に血液が流れにくくなる病気です。下肢に多く発症しますが、炎症を起こす原因がまだはっきりわかっていません。
また、性差は男性が女性に比べて圧倒的に多く、女性は2%程度。好発年齢は20~40歳代と働き盛りの男性であることから、患者さんのQOLはもちろんご家族を含めた精神的援助が重要になってきます。

そこで、バージャー病の患者さんに対する看護の目標を「異常の早期発見」と「症状を悪化させないこと」とし、治療法の選択や生活指導の計画を患者さんとご家族を含めて立案していきます。
まず、異常を早期に発見できるよう十分に経過を観察します。初期の症状としては、手足のだるさやしびれを感じたり、「片方だけ冷たい」と感じたりします。そのうち温度差を自覚するようになります。病気の進行はゆったりで、その間急に進行したり、進行が止まったりします。進行すると、左右の皮膚の色が紫色に変化したりします。歩くときに痛みを覚え、次に安静時にも痛むようになります。数百メートル歩いては止まり、少し休んでまた歩くという状態になります。指先のように靴などで圧迫されやすい位置に炎症(潰瘍)が起きると治りにくく、放置すると広がって壊死を生じることがあります。これは激しい痛みを伴います。また、具体的な症状として、部位・大きさ・皮膚の色・足のしびれ感・冷感・知覚異常・疼痛の程度・歩行状態・間歇性跛行の程度など、丁寧に情報収集をしていきます。

そして、複数の治療方法の中から個々の患者さんに適した治療方法が選択できるよう情報を提供し、症状を悪化させないための生活指導を症状に合わせて行います。また、壊死を生じた場合、やむを得ず指・上肢または下肢を切断することもあります。症状の観察とともに、日常生活の行動範囲を知り、不自由なく生活することができるように環境を整えていきます。多くの場合疼痛を伴います。疼痛が増強すると、生活(行動)範囲が狭くなることが予想されるので、その患者さんに合わせた疼痛コントロールを行い、苦痛を軽減することができるよう努めていきます。

治療法に準じた看護

1. 外科的療法

  1. 経皮的血管形成術 : カテーテルを使用し、血管内の血栓を取り除く、また血管を再建する。
  2. バイパス術 : バイパスとなる血管を移植して血行をよくする。
  3. 交感神経節切除術 : 腹部あるいは胸部の血管を収縮させる交感神経を切除して血管の拡張を拡張する。
  4. 骨髄幹細胞移植 : 患者自身の骨髄液を採取し、血管を再生する細胞を移植する。
  5. 壊死部切除・切断術 : 壊死がひどい場合は、他の部分への進行を防ぐために切除または切断する。
  6. 高気圧酸素療法:高濃度の酸素を吸入し、血液内の酸素濃度を上げることで、低酸素状態にある組織の改善を図る。

2. 薬物療法 (内科的治療法)

  1. 血管拡張剤 : 血管を広げる薬(内服薬・点滴薬)を使用し、血管を広げる。
  2. 抗凝固財・抗血小板 : 血液を固まりにくくする薬を使用し、血栓をできなくする。または、血栓をつくりにくくする。(内服薬・点滴薬)
  3. 神経節ブロック : 痛みに対して下肢では腰部交感神経節ブロック、上肢では星状神経節ブロックが行われる。

このように治療法はさまざまありますが、この病気は基本的に難治性疾患です。患者さんおよびご家族には、外科的療法・薬物療法のどちらを受けられても、症状の改善には長時間を要することを理解していただき、納得のいく治療法を検討し選択していただくことが大切です。

3. 日常生活の自己管理(保存的療法)

血管をできるだけよい状態にし、難治性であることの疾患と上手につきあっていくために、患者さん自身が実践していただきたい項目です。

  1. 禁煙について
    タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させる作用があり、傷がある場合にはその回復を遅延させます。また、ニコチンは、血液中の中性脂肪を増加させるともに、高血圧・動脈硬化の原因になるばかりでなく、毒性の強い発ガン性物質としても知られています。愛煙家が多く、痛みや疾患自体によるストレスのため、かえってタバコの本数が増加する人もいますが、近年増加している ”禁煙外来” などを利用して、早期に完全かつ恒久的に禁煙ができるようにしましょう。
  2. 四肢の保温・保護・清潔・保湿について
    1. 保温 : 四肢の血管は、寒冷刺激により、さらに収縮し、血液の循環は悪くなります。
      1. 屋外では特に外気や水にさらされないよう、手袋・靴下を使用し、保温に努めましょう。靴下は、ゴムの緩いものがよいでしょう。
      2. 室内は暖かくしましょう。特にトイレや浴室など、温度差を生じないよう注意が必要です。
      3. 入浴は血行改善に役立ちます。朝、お湯で温めると活動しやすくなります。傷や潰瘍がすでにある場合は、医師に消毒方法を確認しておきましょう。患部をビニールなどで覆い、浴槽内には入れないようにします。
      4. 電気毛布、電気あんか、湯たんぽやカイロを使用すると血管が拡張し、血流が増すので効果的です、しかし、電気毛布以外は、低温やけどを生じる危険があります。直接皮膚に当たらないように十分注意しましょう。
    2. 保護 : 傷や皮膚病をつくると、正常な血流のときより治りが遅く、潰瘍になり壊死に繋がることもあるので、まず傷をつくらないことが大切です。特に足先は、目が届かないので、十分な観察は必要です。
      1. 爪を切る際は、深爪をしないようにし、足では、十分に体重が支えられるように四角にきりまし ょう。
      2. 四季を通して靴下などを着用し、足の保温に心がけましょう。
      3. 靴は、サイズ・型ともに足にあったものを選択し、足のある一定の箇所に圧力がかかり圧迫しな いようにしましょう。
    3. 清潔 : 特に足は、湿潤しており、細菌が繁殖しやすい場所です。傷をつくり感染すると治癒し  にくいのでつねに清潔に保つことがたいせつです。
      1. まず、毎日観察をし、異常がないか確認しましょう。
      2. 適温の湯・石鹸を使用し、きれいに洗います。その後、必ず乾燥させましょう。入浴できないと きも足だけは洗いましょう。
      3. 清潔に洗濯した靴下などを着用しましょう。
      4. 水虫菌の感染がある場合は、適切な治療を行い完治させましょう。
      5. 保湿:乾燥している皮膚は、抵抗力が弱く傷つき易くなります。清潔に洗った後、水分を拭き取り保湿クリームなどで皮膚の潤いを保ちましょう。
  3. 運動について
    「歩行」を中心とする運動療法は、特別な場所や道具を必要とせず、身体に無理な負担がなく安全性に優れています。この疾患では、歩くことにより筋肉が増加し、細くなった血管の血流を増やしたり、その他の血管の血流を増やすことで側副血行の発達につながり効果的です。痛みなどの症状が出ないよう、休みながら繰り返し行いましょう。
    外科的療法を受けた場合も同様です。歩くことにより、移植したバイパスや、再生した血管の流を増やすことで、再発が予防できます。毎日15分~30分は意識して歩きましょう。
  4. 水分摂取について
    水分が足りないと血液が濃くなり、血行を妨げ、血管がつまりやすくなります。特に高齢になると、若い人に比べ脱水状態になりやすいので、暑い日や運動時には水分を多めにとることが大切です。1日1リットルは飲むようにしましょう。
  5. 食事について
    動脈硬化の予防・糖尿病の食事と同様で、「健康食」を心がけましょう。「健康食」というのは、いわゆる健康食品といわれているものではなく、健康的食事という意味です。つまり、適正なエネルギーをバランスよく摂取するということです。特に食べてはいけないというものはありませんが注意が必要なものを示します。
    1. 刺激性の強い香辛料は控えましょう。
    2. 塩分は控えましょう。薄味を心がけてください。
    3. 油分は控え、動物性脂肪より植物性を選びましょう。
    4. 体重が増えると身体に負担がかかります。増やさないようにしましょう。
  6. 治療の継続について
    完治の難しい病気ですが、生命に対する予後はよい病気です。無理をせずに病気と向かい合い上手につき合って生活していきましょう。
    1. ご自分の身体の観察をしましょう。末梢の動脈に血栓がつまったり、血管が閉塞を起こすと血液の流れが悪くなり、脈の触れが弱くなります。脈の触れる部位を医師または看護師に確認し、毎日触れてみましょう。また、皮膚の温度、色に変化が生じます。日頃から見て感じておくことが異常の早期発見につながります。
    2. 内服薬は量・時間など医師の指示どおり、服用しましょう。調子がよいからといって、自己判断で量を変えたり、中止してはかえって病気を進行させかねません。
    3. ご自分の服用している薬について副作用を含め十分に理解し、副作用が生じたり、症状に変化があるときは、速やかに医師に相談しましょう。
    4. 痛み止めを使用している場合は、いつどのくらい使用し、痛みはどの程度改善されたか、数字に表し記録しておくと今後の治療の参考になります。
    5. 症状が軽いとき、調子がよいときでも定期的に受診しましょう。

バージャー病は、強い痛みをともない、難治性の疾患であるため、患者さん自身は身体面ばかりでなく、精神的にも苦痛をともないます。また、不幸にして四肢に潰瘍を形成し、その部分あるいは、広範囲の切断を余儀なくされる場合も少なくありません。ボディイメージの変化や失った部位に対する喪失感は、患者さんにしかわからない気持ちです。そのようなときのご家族のサポートや同じ病気と闘っている患者さんのアトバイスが重要になります。また、将来的な生活のイメージを早期から描くことは、リハビリテーションをする上でも励みになります。

私たち看護師の役割は患者さんおひとりおひとりの生活状況に合わせた支援を行うことです。患者さんおよびご家族が必要なときに必要な情報や場所・人材の提供を行っております。

バージャー病は国の指定難病です。難病申請することで医療費の控除を受けることができる可能性があります。ご自身の病態が申請要件を満たしているかについては主治医に相談してみましょう。

難病情報センター  http://www.nanbyou.or.jp/entry/170