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循環器領域における血管再生療法Buerger病から、心臓、脳梗塞まで

講師 国立循環器病センター研究所循環動態機能部脳循環研究室室長 田口明彦
茨城県バージャー病患者と家族の会設立20周年記念講演(文献)

講演要旨

Buerger病の治療法として、まず禁煙が最も重要であり、それに加えて内科的な薬物療法を行います。しかし、それらの治療法だけでは痛みや潰瘍が治らないことも少なく、それらの患者さんには外科的なバイパス手術や交感神経節切除が考慮されます。さらに、そのような内科的、外科的な治療でも虚血に伴う症状が十分改善せず、痛みがひどい場合などは、患肢の切断がやむを得ず行われてきました。しかし近年、新しい治療法である血管再生療法の臨床応用が開始され、患肢の切断を免れた症例も報告されています。血管再生療法は大きく分けて、①遺伝子治療、②幹細胞治療、の2種類があり現在のところどちらの治療法がより効果的かは、はっきりとは判っていませんが、今回の講演では、幹細胞を使った治療法および研究の現状に関するお話を中心にさせて頂きます。

ヒトの体の中には、血管内皮前駆細胞と呼ばれる幹細胞が存在し、体中の血管内皮細胞(血管の一番内側にある細胞)の維持や虚血部位での血管新生に関与していることが知られています。この血管内皮前駆細胞は末梢血中に存在しているのと共に、骨髄中にも多数存在しており、血管再生療法ではこの血管内皮前駆細胞を自分の血液や骨髄から取り出し、虚血部位に注射します。この血管再生療法で、多数の施設から患者さんの症状が改善したことが報告されています。ただ全ての患者さんに有効であるわけではなく、また再発もあること、さらには新しい治療法だけに未知の副作用の可能性もあることより、今後も十分な研究を続けていく必要があると考えられています。

また、この幹細胞を使った治療法はBuerger病の治療だけでなく、狭心症や心筋梗塞などの治療法として、臨床試験が始まっており、国内外の施設よりその有効性が報告されています。さらに、私達はこの治療法を、脳梗塞の患者さんに応用するための研究を開始しており、現在までのところ動物実験では脳梗塞後の血管内皮前駆細胞等の幹細胞の投与が、①脳血管の再生を著明に促進すること、および②幹細胞投与による脳血管再生が神経細胞の活性化や神経構築の再構成を促進し、著明な神経機能の改善をもたらすこと、などを明らかにしてきました。また、脳梗塞患者さんでの検討では、末梢血中の血管血球幹細胞の減少が脳梗塞の増加や血流低下、神経機能低下に関連していること、なども明らかにしてきました。

今後も幹細胞を使った、①より効果的な治療法の開発、①様々な疾患への応用、③安全性の検証、などの研究が国内外の施設で発展的に進められると考えています。