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筑波大学で行う末梢動脈疾患に対する細胞治療

講師 筑波大学臨床医学系循環器外科 松下昌之助 (講演)
茨城県水戸保健所・茨城県バージャー病患者と家族の会難病講演会共催事業

講演趣旨

筑波大学では、2005年附属病院倫理委員会の承認を得て、末梢動脈疾患に対する自家末梢血CD34陽性細胞移植療法の治験を開始した。

遺伝子や細胞を用いた血管再生療法が難治性末梢動脈疾患を対象として検討されはじめている。遺伝子治療はVEGFやHGFなどの血管新生因子の遺伝子を虚血部位に注入するもので、日本では現在HGF遺伝子による治療が行われている。一方、細胞治療は自己の骨髄細胞より血管内皮前駆細胞とみなされる細胞を集め、虚血部位に注入し、血管新生を促進させるものである。自己の細胞を用いるため拒否反応の心配はなく、感染の可能性も低い。血管新生の主役である血管内皮細胞に分化する血管内皮前駆細胞が1997年に成体に存在することが示されて以来、この細胞群をどのように集め、臨床に応用するか様々に検討されてきた。まず、腰推麻酔下に腸骨骨髄より直接単核球を採取し注入する方法が用いられた。次に、G-CSFという骨髄から末梢血中に白血球を動員する物質を皮下注入し、アフェレーシスの方法で骨髄単核球細胞を集め、虚血部位に注入する方法が考えられた。血管内皮前駆細胞は細胞表面にCD34と命名される表面抗原蛋白を有しているため、抗CD34抗体を用いてさらにCD34陽性細胞のみを取り出して注入することに、高い評価を見出す考えも出てきている。しかし、現時点では両者の優劣を論じるまでの知見は得られていない。

我々は、末梢動脈疾患に対する細胞治療を臨床治験として開始するにあたり、同じCD34陽性細胞数で単核球群とCD34陽性細胞単独群を比較することを目的とした。 遺伝子治療であれ、細胞治療であれ局所注入といえども血管新生因子が血液循環に沿って全身に流れる可能性がある。虚血部位には血管の増生は好ましい現象であるが、発癌過程においては、血管の増生は癌の発育を助成することになる。また、未熟な末梢血管の増生が病態である重症の糖尿病症網膜症では、悪化させる可能性がある。また、G-CSFは虚血性心疾患の増悪因子である可能性も指摘されている。
従って、細胞治療にあたっては、癌の有無、虚血性心疾患の有無を確認することは極めて重要であり、該当する場合は除外条件となる。

細胞治療の適応条件は、我々の場合、Fontaine llb, lll, lVの四肢のASO, Buerger病であり、十分な薬物療法を行っても効果なく、手術適応がなく、QOLが悪化し、患者さんご自身が細胞治療を望んでおられる場合である。

上記の条件を検討の上、臨床治験第1例目(ASO)を2005年11月に、第2例目(ASO)を12月に施行した。現時点では、術後3ヶ月目の評価の時期を迎えていないので、講演会では途中経過をお話しする。また、今後の見通しについてもお話しする予定である。